
Evgeny Yudin
著者
資格: International Health Access Consultant
役職: Founder of Pillintrip.com
会社: Pillintrip.com – International Health and Travel

免責事項:この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医療アドバイスの代わりにはなりません。アトピー性皮膚炎やその他慢性的な皮膚疾患がある方は、特に旅行時や新しい製品を使用する際には、治療方針を変更する前に必ず皮膚科医にご相談ください。
私は何度もこのような光景を見てきました。リラックスした旅を夢見ていた患者が、かゆみや再発への心配で半分を費やしてしまうのです。皮膚科医として、アトピー性皮膚炎とともに旅するのは辛いものではないことをはっきり言えます。大切なのは「事前準備」と「シンプルな習慣」、そして本当に効果のある対策を知ること——ネットで見かける奇跡的な製品リストに頼る必要はありません。
それではステップごとに説明しましょう。
旅行がアトピー性皮膚炎を引き起こす理由
旅行をすると、皮膚は突然の環境変化にさらされます——新しい気候、乾燥した空気、ホテルの洗剤、そしてストレス。実は飛行機の空気はほとんど砂漠より乾燥しており(湿度が20%以下になることも)、皮膚の水分は保持する以上に急速に失われます。
寒冷や強風、新しい石鹸、現地の水道水もトラブルの原因です。旅行を避ける必要はありませんが、こうした原因を知って備えることが重要です。
旅行が敏感肌にどのように影響するか、詳細はNational Eczema Associationの概要が参考になります。
ステップ1:出発前の準備
アトピー性皮膚炎の方は、どんな旅行でもまず医師に相談してください。例えば保湿剤を頻繁に使うことや、急な再発に備えて短期ステロイド外用薬を持参することなど、普段のケアの変更点について聞いてみましょう。
私が通常患者さんに勧める「アトピー性皮膚炎旅行キット」には以下を含めます:
- 低刺激性洗浄剤(例:CeraVe Hydrating Cleanser または La Roche-Posay Lipikar Wash)
- 毎日使える保湿クリーム(Eucerin Advanced Repair Cream、Aveeno Eczema Therapy)
- ステロイドクリーム(例:ヒドロコルチゾン1%、医師処方ならモメタゾンフランカルボン酸エステルなど)
- 経口抗ヒスタミン薬(セチリジン、ロラタジン、フェキソフェナジン)
- 無香料のおしりふき
- 処方箋のコピー(海外で薬が必要になった場合用)
一般的な旅行の医療アドバイスはAmerican Academy of Dermatologyも役立ちます。
保険会社にも海外でアトピー治療がカバーされるか確認しましょう。カバー外の場合は慢性皮膚疾患対応の旅行保険も検討してください。
ステップ2:機内での皮膚管理
飛行機は敏感肌には過酷な環境です。フライト前にぬるま湯でシャワーを浴び、低刺激性洗顔剤を使い、濡れた肌にたっぷり保湿クリームを塗りましょう。香水やアルコール系製品は避けてください。

フライト中は:
- 2~3時間おきに保湿クリームを重ね塗りする
- 頻繁に水分補給——脱水は隠れた悪化要因です
- アルコールやコーヒーは避ける——さらに乾燥します
- ミストやミニサイズの保湿剤(例:ヴァセリンヒーリングジェリー、アベンヌ シカファテ+バーム等)を手や顔に使いましょう
Redditのr/eczemaユーザーは、長距離フライトのルーティンとして「出発前に抗ヒスタミン薬を2倍摂取」「こまめな保湿」「良質な睡眠でかゆみを抑える」などを挙げており、日頃のケアが大きな違いになることを教えてくれます。
航空機内で手が割れやすい方は、コットン手袋+クリームで保護しましょう。
ステップ3:ホテル・宿泊先での工夫
ホテルには隠れた刺激物がいっぱいです:洗剤、エアコン、香料入り石鹸など。患者さんに私が勧めているのは——
- 自分用の枕カバーと小さめタオルを持参
- ホテルに低刺激性の寝具をリクエスト、羽毛枕は避ける
- 空気が乾燥しすぎているならエアコンを停止
- ホテルの石鹸やシャンプーは使わず自前のものを使用
- 可能なら小型加湿器を持参——一晩でかなり違います
ステップ4:現地での日常ケア

気候に合わせてスキンケアを調整しましょう。
暑く湿度の高い場所では:
- 軽くてべたつかない保湿剤を選ぶ
- 汗はすぐ流す——敏感肌に刺激となります
- 通気性の良いゆったりした服(コットンや竹素材)を着用
寒い・乾燥した場所では:
- より濃厚なクリームや軟膏を使う
- 露出する部位は手袋やマフラーで覆う
- 部屋を暖め過ぎない——乾燥と痒みが助長されるため
プールで泳ぐ場合は、直前・直後にきれいな水で洗い、その後すぐ保湿剤を塗りましょう。
Mayo Clinicも、短めのシャワーとこまめな保湿が旅行中の肌荒れ予防に不可欠としています。
ステップ5:ぶり返した時はどうする?
どんなに準備しても悪化はあり得ます。慌てず、早めに対応しましょう。
- 処方されたステロイド外用薬を1日1~2回、数日間使う(ヒドロコルチゾン1%、ベタメタゾン、エロコン等医師の指示による)
- 数時間ごとにしっかり保湿する
- 掻かず、冷たい湿布を10~15分あてる
- 痒みが眠りを妨げる場合は夜に抗ヒスタミン薬を使う
- 滲出液やかさぶた、発熱が起きたら現地の医師に相談を。感染症の可能性があり、抗生物質治療が必要かもしれません
別のRedditユーザーがr/eczemaで役立つ情報を投稿しています:空港安全検査では「薬が必要」と必ず伝えましょう——余計な時間や説明を省けます。
ステップ6:帰国後のリカバリー
帰宅したら肌を休ませ、普段通りのケアに戻しましょう。低刺激性洗浄剤を使い、数日間は保湿を徹底して。旅行は湿度、食生活、睡眠パターンなどを変え、それが肌にも影響します。
穏やかなぬるま湯浴+重曹かオートミールパウダーを入れると炎症予防に効果的です。新しいスキンケアは1週間は控えてください。
アトピー性皮膚炎のための旅行必需品キット

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アイテム |
効果 |
プロのコツ |
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低刺激性洗浄剤(CeraVe Hydrating Wash) |
皮膚を傷めずに洗浄 |
必ずぬるま湯で使用 |
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保湿力の高いクリーム(ユーセリン クリーム, Cetaphil) |
バリア機能を回復し乾燥を防ぐ |
シャワー後3分以内に塗布 |
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ステロイド外用薬(ヒドロコルチゾン1%, モメタゾン) |
炎症をすばやく鎮める |
医師の証明書と一緒に機内持ち込み |
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かゆみや腫れを抑える |
夜に服用すると眠りやすい |
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バリア軟膏(ワセリン、Aquaphor) |
乾燥部位の保湿を維持 |
フライトや寒さ前に塗布 |
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ミニ加湿器 |
ホテルの空気に湿度を追加 |
就寝2~3時間前に稼働 |
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処方箋コピー・保険証 |
海外で医療が必要な時に便利 |
スマホでデジタル保存 |
まとめ
アトピー性皮膚炎があっても好きなことを諦める必要はありません、ただ備えるだけです。これらの習慣を身につけた患者は、週末旅行も長距離国際便も快適かつ安心して楽しんでいます。
皮膚を大事にしつつも、計画の妨げとせずに。小さな旅行キットと賢い調整、ちょっとした自己ケアで、再発を気にせず旅を満喫できます。
覚えておきましょう:アトピーは一緒に旅しても、あなたの旅を決めるものではありません。
FAQ:アトピー性皮膚炎と旅行についてよくある質問

1. アトピー性皮膚炎用のクリームは機内持ち込みできますか?
はい——必ず持ち込むべきです。TSA(および世界中の多くの空港保安機関)では、医療上必要なクリームやジェル、軟膏の容量が100mlを超える場合でも申告すれば持ち込み可能です。製品は元のパッケージに入れ、通常の洗面用品とは別にしておきましょう。
セキュリティチェックで「これは医療目的で処方されたものです」と伝えれば充分です。処方箋の提示は求められませんが、複数持ち込む場合は医師のメモがあると安心です。私は通常、小容量の保湿クリームをクリアバッグに、大きいものは医療キットに分けて持つよう患者さんに勧めます。厳密なチェックが入っても必要なものは手元に残ります。
長距離フライトでは機内の空気が非常に乾燥しているため、クリームは預け入れず必ず手元に持ちましょう。
2. 長距離フライト中に再発を防ぐには?
機内の湿度は20%未満で、搭乗した瞬間から水分が失われていきます。対策は層状ケア——前夜、当日朝、出発直前に保湿し、手や顔にはEucerin Advanced RepairやCeraVe Moisturizing Creamのような無香料のリッチクリームをシャワー直後に塗りましょう。
フライト中、特に手や顔は2~3時間ごとに保湿し直します。機内の石鹸は刺激もあり硫酸塩も多めなので使用せず、無香料のウェットティッシュ+クリームがベストです。
こまめな水分補給(1時間に1回ほど)とコーヒー、紅茶、アルコールは控えることで内部からの乾燥を防ぎます。ピリピリした時はAquaphorやワセリンを薄く塗り、薄いスカーフやコットン手袋で空調の風から肌を守りましょう。
3. ホテル予約時に確認すべき点は?
ホテル環境は隠れた刺激の宝庫——強力な洗剤、香料付きクリーナー、羽毛枕、化繊シーツ、暖房やエアコンによる乾燥。予約時には低刺激・無香料の部屋を希望しましょう。主要なホテルチェーン(Hyatt, Westin, Marriottなど)はこうしたリクエストが可能です。
到着したら装飾用追加寝具や枕は除去しましょう(ほとんど洗われていません)。可能なら自前の枕カバーやコットンシーツを使い、室温は20~22℃前後を目安に。寝る前は携帯型加湿器を1時間ほど稼働させてください。
バス用品はホテル製品は避け、香料・ラウリル硫酸ナトリウム不使用の自前洗顔料(La Roche-Posay LipikarやAveeno Eczema Therapy Wash)を持参。ちょっとした配慮で楽しい夜と悪化の分岐点になります。
4. 海外で再発したらどうすれば?
まず落ち着いて対処しましょう。処方されたステロイド外用薬(ヒドロコルチゾン1%、ベタメタゾン、モメタゾンフランカルボン酸エステルなど)を患部に1日2回数日使用します。保湿は頻繁に、数時間ごとに繰り返しましょう(クリームや軟膏でしっかりフタをする)。
掻かないよう気を付け、冷湿布(10~15分)で熱やかゆみを和らげ、可能な限り涼しくゆったりした服装で過ごしましょう。
痛み・赤み・腫れ・滲出液があれば細菌感染の可能性があるのでできるだけ早く現地医師の診察を受けてください。ほとんどの薬局やクリニックで外用または経口抗生物質の処方が可能です。
軽度ならセチリジンやロラタジンなど経口抗ヒスタミン薬も役立ち、熱い夜でも眠りやすくなります。早めの対応が悪化防止の鍵です。
5. 旅行後の回復にどれくらいかかりますか?
肌は旅行のストレスから回復するのに通常数日かかります。フライト、気候の変化、新しい食事や睡眠不足は免疫にもバリア機能にも影響します。帰宅後は休息と保湿、シンプルケアを重視してください。
ぬるま湯で短時間シャワー、低刺激洗顔剤で丁寧に洗い、タオルは優しく押し当てて、シャワーから3分以内に保湿剤を使いましょう。当分は新スキンケアの実験は避け、慣れたアイテムだけを使いましょう。
きゅうり、メロン、オレンジなど水分豊富な食品も潤いアップに有効です。乾燥が強い場合は夜にワセリンやAquaphorを重ねて塗ると改善しやすく、1週間で安定します。
もし通常より重い再発があった場合は、次回の旅行前に皮膚科医へ再診して治療方針を調整しましょう。
