
Evgeny Yudin
著者
資格: International Health Access Consultant
役職: Founder of Pillintrip.com
会社: Pillintrip.com – International Health and Travel
普段は自宅で無害な薬が、なぜ海外では突然法的トラブルになるのか、不思議に思うかもしれません。実際のところ、各国には薬の規制に対する独自の考え方があり、それぞれの薬物取締法、医療基準、文化的感受性に基づいています。
薬物統制法
メキシコやトルコなどの国々では、薬乱用や密輸を防ぐために厳格な規制が施行されています。たとえばメキシコでは、感冒薬によく含まれるプソイドエフェドリンが、違法なメタンフェタミン製造に使われていることから2009年に禁止されました。トルコでも、複数の密輸事件を受けてトラマドールの規制を強化し、違反時は厳しい法的制裁があります。
医療安全基準
米国や英国では、他国では安全とされる一部の薬が、医療上のリスクから禁止されています。欧州で広く使われているメタミゾール(アナギン)は、米英では稀だが重篤な無顆粒球症(命に関わる血液疾患)のリスクがあるため禁止です。
文化的・規制の差異
UAE(アラブ首長国連邦)などの国々では、文化的な価値観が薬の規制に大きく影響します。コデインを含む薬-咳止めや鎮痛剤に一般的なオピオイド-は非常に厳しく管理されており、明確な許可なしで持ち込むと高額な罰金や懲役、国外退去となり得ます。
こうした背景を理解することで、海外旅行をより適切に準備し、深刻な法的トラブルを避けることができます。
世界の人気旅行先で意外に禁止されている10の薬(2025)
以下では、旅行者が現地の規制を知らずによく持ち込む具体的な薬を、人気トップ10渡航先ごとに、実例・アドバイス・代替薬とともにご紹介します。
1. フランス(2024年:1億人)
禁止薬:コデイン(処方箋なしの場合)
フランスでは、Nurofen Plusのようなコデイン含有薬や咳止めシロップも2017年以降は処方箋が必要です。以前は市販薬でしたが、今は正当な処方箋がなければ税関で没収、または高額な罰金となる可能性があります。
実例:
パリでは、最近、処方箋を持っていなかった英国人観光客からヌロフェンプラス50箱が没収されました。
旅行のコツ:
アセトアミノフェンやイブプロフェンなどのより安全な代替薬に切り替えましょう。これらは処方箋なしで広く入手可能です。
2. スペイン(2024年:8,520万人)
厳格規制薬:ベンゾジアゼピン(例:ジアゼパム)
スペインでは、不安障害や不眠症治療で世界的に処方されるベンゾジアゼピン系は厳格な規制対象です。ジアゼパム(バリウム)などの薬を適切な書類なしで持ち込むと、没収や法的問題につながります。
必要書類:
詳細な処方箋やスペイン語翻訳の医療証明書が必要です。不十分な書類では没収や罰金となることがあります。
旅行のコツ:
出発前に、医師に投与量・医療上の必要性・滞在期間が記載された公式レターを書いてもらい、スペイン語訳を用意しましょう。
3. アメリカ(2024年:6,650万人)
禁止薬:メタミゾール(アナギン)、ほとんどのバルビツール酸系(フェノバルビタールを除く)
アメリカで一般的な薬、例えばメタミゾール(アナギン)は完全に禁止です。またフェノバルビタールを除くほとんどのバルビツール酸系も依存性や過剰摂取リスクが高いため厳禁です。
実例:
2024年、アメリカ税関は多くが東欧から到着した旅行者からアナギン1200箱を没収しました。
旅行のコツ:
FDA禁止薬リストを事前に必ず確認し、アナギンの代わりに市販で認められたタイレノール(アセトアミノフェン)やアドビル(イブプロフェン)を使用しましょう。
4. イタリア(2024年:5,720万人)
規制薬:プソイドエフェドリン(Sudafed等の風邪薬に含まれる)
イタリアではプソイドエフェドリン含有薬が厳しく管理されており、1人あたり720mgまでに制限されています。これを超えると没収や罰金となります。
旅行のコツ:
Sudafedのような製品を使う場合、キシロメタゾリン(オトリヴィン)やオキシメタゾリン(アフリン)配合の点鼻薬など、より安全な代替薬を選びましょう。
実用アドバイス:
プソイドエフェドリンを持ち込む場合は、常にオリジナルのパッケージと明記された処方箋または医師の証明書を添えてください。
5. トルコ(2024年:5,520万人)
禁止薬:トラマドール
トルコではトラマドール(人気のオピオイド鎮痛剤)は厳格な規制対象の麻薬です。明示的な許可や正式な書類がなければ、単なる税関違反ではなく薬物密輸とみなされ、重罰が下されます。
実例:
2024年、イスタンブール空港で600gのトラマドールを所持していた旅行者が逮捕され、12か月の禁錮刑となりました。
旅行のコツ:
トラマドール配合薬は持ち込みを避け、代わりにイブプロフェンやナプロキセン等のオピオイド非含有の市販薬を検討しましょう。